一膳飯は亡くなった方があの世に旅立つ際にお供えする、一膳限りの飯のことを意味しています。茶碗にご飯を山盛りに盛った上で、ご飯の真ん中に箸を立ててお供えをするのです。
葬式において、この世に別れを告げ、あの世に旅立つ死者への作法として行われています。意味は、あの世に旅立って二度とこの世に戻ってこない相手に対して二膳目以降は無いという意味があるのです。
この世での最後の食事という意味があるので、お葬式の作法として行われるようになった背景があります。
一膳飯の作り方は宗派や地域によって異なりますが、全てにおいて共通していることは山盛りに盛った飯の上に箸を立てることです。
亡くなった方のために新しく1合分だけ炊飯して、その全ての飯を茶碗に盛り付けます。この時に生者と死者の飯を共有しないことが重要です。
死者のために用意した米を生者と共有してしまうと、あの世に旅立つ者への作法としては間違っているので、必ず専用のお米を炊飯する必要があります。それから、炊き上がったお米はひと粒も残らずに茶碗に盛り付けます。
使用する茶碗や箸などは、生前に亡くなった方が使用していた物を使うようにすることでこの世での最後の食事という意味をもたせます。
地域や宗派によっては炊き上げるお米は玄米でないといけなかったり、ご飯を十字にしなければならないなどの作法がある点にも注意しましょう。
一膳飯の備える場所は無くなった方の枕元にします。枕元に備え付ける枕飾りは他にもあり、白木の小机の上に、香炉とロウソクの他に枕団子と水と鈴を設置します。
一膳飯は仏教において行われている作法なので、キリスト教や神式などでは行われていません。お通夜とお葬式を終えた後は、茶碗を割った上で、ご飯と箸と枕団子を棺の中に入れて出棺します。
これはあの世にたどり着くまでにお腹を空かせないようにするため、そしてあの世にたどり着くまでの道中でお腹を空かせた人がいたら、分け与えることで徳を積むための作法です。
徳を積むことであの世に行った後、極楽浄土へたどり着きやすくするために行います。
このように一膳飯には死者がこの世への未練を残さないようにして、安心してあの世に旅立ちするための儀式や作法として行われています。
ただし、同じ仏教であっても浄土真宗の場合は亡くなったらすぐに極楽浄土に行くことになっているので、この作法は行われておらず、他の宗派でも近年では形式化しており徐々に簡略化されていく傾向にあります。