経帷子とは、故人が霊界に旅立つ際に着ていく衣装のことです。死装束という言葉がよく使われますが、そちらはあくまでも俗称なので葬儀の場には適していません。また、帷子というのは単衣によって製作された着物を指します。単衣とは「ひとえ」という意味であり、裏地を使わない点が他の着物との相違点です。
さらに、返し縫いや玉止めといった技法を使わないことも経帷子の大きな特徴となっています。一般的には、数人がかりの分担作業で縫いあわせていき完成させます。
素材として用いられることが多いのは朝や木綿などです。色については白で統一しているケースがよく見られます。いずれにせよ、経文をはじめとした仏教関連の文言を書き入れることも習わしです。
なお、この説明に該当するのは伝統的な経帷子であり、近年になって大きな変化が見られるようになりました。そのような特別な着物を用意せずに、生前に使用していた衣服を使うケースが増えているのです。
たとえば、お気に入りのドレスがあった女性には、それを着させてあげるといった具合です。もともと特に厳密なルールが設けられているわけではなく、宗派の垣根も低くなってきているため、そのような多様化が進んでいます。