涅槃とは仏教用語で悟りを開いて、煩悩がなくなった状態のことをいいます。
釈迦は悟りを開いて涅槃となって亡くなったことから、死を意味する言葉でもあります。
釈迦は2月15日に沙羅双樹のもとで涅槃となりました。ですから陰暦の2月15日は釈迦入滅の日となっていて、この日に法会を開くお寺も多いです。また沙羅双樹のもとで悟りを開く姿は画として残っています。
知っている人も多いと思いますが、煩悩は人の苦しみのもとです。除夜の鐘の回数から、煩悩は108あるという説が有名です。しかし実際のところは数々の説があり、少なく見積もったものは3、多く見積もったものは無限となっています。
有名なものは三毒で、貪欲と嗔恚、愚痴の3つです。貪欲は貪り求める衝動であり、食欲や性欲に象徴されます。瞋恚は怒りや憎しみを意味します。嗔恚を鎮めるには慈悲の瞑想を深めるのが有効であると、釈迦は息子に説いたと言われています。
三毒の愚痴は現在使われている意味とは異なります。真理を知らないことであり、それに基づいて考え、行動しない人間の愚かさを表します。
涅槃という言葉はもともと、サンスクリット語で吹き消すことを意味しました。迷いなど煩悩の火を吹き消すことを意味したからだと考えられています。
英語ではニルヴァーナです。ただし日常会話でニルヴァーナという単語が出た場合、同名のロックバンドを意味する可能性も高いです。グランジムーブメントを牽引したバンドであり、英語圏でも有名ですから注意が必要です。
釈迦が涅槃となった時、その頭は北に向いていたと言われています。そのため仏教では人が亡くなった時は、頭を北に向けるのが習わしとなりました。頭を北にして寝る行為が悪いとされているのは、生きている人を故人と同じ扱いにするのが良くない、という発想からです。お茶碗にお箸を刺して立てる行為を忌避するのと同じ発想です。
仏教の世界で大切にされる三法印のひとつに、涅槃が入っています。涅槃寂静という言葉で、煩悩がなくなった安らぎの世界を表します。あと二つは諸行無常と諸法無我であり、一般常識としておさえておくといいでしょう。