昔から死は非日常のものであり、死の世界は現実の世界とは異なる真逆の世界であると信じられてきました。死を通して新しい世界に移ることで、また出会えることができるという考え方です。
現代の日本でも、葬儀屋お通夜が夜執り行われていることは、あの世は昼夜が逆転しているため向こうの世界の明るい時間帯に送り出すことで、向こうの人たちに明かるいときに迎え入れてもうらおうという風習です。
このように真逆のことを現実世界の葬儀等で行うことを逆さ事と呼びます。逆さ事とは宗教的な作法ではなく、日本で長く続く行われてきた風習という位置づけです。
葬儀では故人の枕を北側において寝かせます。北枕という風習でご存知の方も多いともいますが、これはお釈迦さまが無くなられた際に北を向いていたという伝説からの由来です。現実世界では、北枕は死を連想するということから別の方角で寝ることを意識する人が多いですよね。
逆に葬儀の場では、死の世界に迎え入れてもらえるよう北枕に個人を寝かせます。ほかにも服の着せ方は、通常は蝶結びは横になるように結びますが個人の死装束のひもを結ぶ際は、縦に結び紐の先や輪が縦になるようにします。
また水にお湯を注ぐ逆さ水と呼ばれるものや、逆さ着物と言って死に装束を着た個人への埋葬品(副葬品)に生前好きだった衣服を逆さにして襟元を脚側へかぶせる風習も地域によって受け継がれています。
ほかにも、葬儀の際に逆さにした屏風を立てる地域もあります。逆さ?風と呼ばれ、悪霊が個人に取り憑こうとするのを防ぐ魔よけの意味を持っています。
これらの逆さ事は個人のためだけではなく、今生きている私たち自身にも効果があります。先ほど北枕で寝ないという風習があるように、生と死とを分けることで今生きている人が死のほうに連れていかれないようにするという意味も込められているのです。
このように逆さ事は様々な種類が地域によって受け継がれているため、周りの人とも相談しながら決めていくと良いでしょう。