臨終での役割と心得②

人間が息を引き取る瞬間やその間際を意味している臨終、意味合いとしては刹那の出来事ですが命が終わる瞬間だからこそ真摯に向き合う事が今も昔も求められています。
例を挙げるなら臨終行儀で、これは死に際の作法です。

古今東西、人間の死に際が迫るとその国ごとの文化を反映した儀式や作法が生まれました。インド仏教では祇園精舎の北西の一角に無常院という建物をつくり、そこで病人やこれから死を迎える者を招いたり、ヨーロッパでは死が迫っている者でも回復する見込みが0ではないため「看取る者はその者に最後まで尽くすように」と説いていたり等、挙げられます。

日本では平安時代中期に活躍した天台宗の源信、その彼が手掛けた「往生要集」により死を迎える者とその看取る者の接し方や作法が言及されました。内容を簡単にまとめると先述したように息を引き取りそうな者は無常院に寝かせ、看取る者は看病しながら念仏を唱えるなど仏教的です。現在では病院で息を引き取る事が一般的であるため、臨終行儀はほとんど行われていません。

しかしその内容は現在普及されているターミナルケアに通じるところが多々あります。
ターミナルケアとは病気や老衰など最期の時間が迫っている人が心を穏やかに、そして満足して旅立てるように配慮するケアです。緩和ケアと捉えられており、治療を目的とした一般的なケアとは根本的に異なっています。

仏教と医学、学問的には別ジャンルな両者ですが、臨終に対する考え方はよく似ているのが特徴的です。

その似ている点とは臨終という時間の役割と心得で、特に看取る側の心得はどちらも実践的となっています。最期の時間が迫っている人にも辛抱や理解を求められますが、何よりも注意を払わなくてはならないのは見送る側の人間です。実際にターミナルケアの実施の判断をするのは患者ではなく、家族だったりします。

この場合は認知症が進行して患者本人が判断できないため、その代わりに家族が判断するわけですが、終活に興味がない限り、どうしたらいいのか混乱してしまうのが常です。だからこそ臨終には強い自制心と冷静さが求められます。そうでもしない限り、平穏な時間など過ごせないからです。


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